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育たないと言うより、育てない


 会社で面白い話が掲示されていた。
いわく、「教育などした所で人材は育たない」と言うのだ。

#個人的にはこのような内容を多くの人が見ることのできる場所に掲示する行為そのものに
 疑問を感じる。「おまえは生まれつきダメなんだ。」等と言われて奮起しようと
 思う者がいったいどれだけいるというのだ。

 ヤクルトの古田捕手。楽天の野村監督の愛弟子とも呼ばれるが、彼も野村監督が
育てたと言うより元々素材が良かったから、だというのだ。その証拠に野村監督の
実の息子、カツノリ捕手は明らかに古田捕手に及ばない、と例まであげていた。

 育てようとするのは無駄だという。正確には、見込みの無い人間を育てようとした
所で無駄、育つ見込みのあるものだけを企業は採用しないといけない、という。

 これだけ聞くと、そうかもなぁ、と思ってしまうが、冷静に考えるとずいぶん
極論だと思える。

 野球で喩えるなら。あの王監督は最初三振王、と呼ばれていた。それが自身の努力と
周りの人の助力など、いろいろな物もあって世界のホームラン王、と呼ばれるまでに
なった。

 これは王監督の持つ素材が良かったから。そうかもしれない。ただ、そんな見方を
している人が『三振王』と呼ばれている人間の素質を見出そう、どうにかしようなどと
考えるだろうか。

 人材は育たないのではない。もともとの素養がすべてでもない。
ではなにが違うか。なにが差を分けるのか。

 育てる側の技量だ。人を育てるというのは想像以上に能力が必要だ。それにその分野に
精通しているだけでなく『育てる事』そのものに対する能力というのも存在する。

 そしてなにより、日本では圧倒的に人を育てる事を軽視する傾向がある。
野球など良い例ではないか。若い人をこつこつ育て、実績をあげる監督なんてあまりに
少ないから、野村監督のようにその分野でも有名になってしまうのだ。これが
育てる能力のある人がごろごろしていたら、別に取り上げられる事も無いだろう。

 でも実際は、お金でよその球団から引っ張ってきて、結果長続きせずに終わる。
某球団に限らず、どこも似たような物ではないか。

 選手と同じくらいの年俸をもらっている監督、コーチがなぜごろごろといないのか。
人を育てる事、それを行う人を評価できない限り、どんな分野であろうと長続きなどしない。

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